思考記録の書き方:認知行動療法の代表的な方法を、手順で

思考記録は、つらい考えをつかまえて落ち着いて見直し、もっと公平な考え方に書き直すための方法です。仕組みを、具体的な例といっしょに紹介します。

最終確認:2026年10月

思考記録とは

思考記録は、認知行動療法でもっともよく使われる方法のひとつです。日本では「コラム法」や「7つのコラム」とも呼ばれます。土台にある考え方はシンプルで、研究でもよく確かめられています。気分を落ち込ませるのは、たいてい状況そのものではありません。その状況についての「自動思考」、つまり気づく前に頭に浮かぶ、とっさの受け止め方です。「返信が来ない」は事実です。「怒らせてしまったんだ」は考えです。それなのに、考えは事実のような顔をして浮かんできます。

思考記録では、その一瞬を紙の上でゆっくり見直します。状況を書き、自動思考をつかまえ、それによって生まれた気分に名前をつけます。そのうえで、公平な第三者になったつもりでその考えを検討し、よりバランスのよい考えを書きます。目指すのは、無理に前向きになることではありません。目指すのは正確さです。自動思考はいわば下書きです。ストレスを抱えた頭が書く下書きは、事実が示すより厳しい内容になりがちなのです。

書き方の手順を、例で

基本の形は7つのステップでできています。身近にありそうな例で、順に見ていきましょう。

  • 1. 状況:事実だけを一行で。「朝9時にプロジェクトの報告を送った。夜になっても返信がない。」
  • 2. 気分とその強さ:気分に名前をつけ、10点満点で点数をつけます。「不安 7/10、少し恥ずかしい 4/10。」言葉が正確なほど、思考記録全体がうまく働きます。気持ちのホイールは、まさにこのステップのために作られています。
  • 3. 自動思考:頭に浮かんだことを、書いてみるとどれほど理不尽に見えても、そのまま書きます。「報告の出来が悪かったんだ。私には荷が重いと思われている。」
  • 4. 根拠(考えを支える事実):正直に書きましょう。ここを飛ばすと、思考記録はうまくいきません。「彼女はいつもなら返信が早い。報告は急いで仕上げたものだった。」
  • 5. 反証(考えに反する事実):「昨日、今週はとにかくバタバタだと言っていた。これまでの3回の報告は評判がよかった。返信がないことは、評価ではない。」
  • 6. バランスのよい考え:正反対の考えではなく、公平に書き直した考えです。「報告は急ぎだったけれど、たぶん問題ない。返信がないのは、私の仕事より彼女の忙しさのせいだろう。今夜あれこれ想像するより、明日聞いてみればいい。」
  • 7. いまの気分:もう一度点数をつけます。「不安 4/10。」2〜3点下がれば、それはよくある、そしてちゃんとした成果です。ゼロになることを目指す必要はありません。
BrightLogの日記に組み込まれたガイドつきの思考記録。浮かんだ考え、それを支える事実と反する事実、振り返ってみた状況を書ける

よくある失敗

  • 状況を、自分の解釈で書いてしまう。「メッセージを無視された」は、もう考えです。状況は「返信がない」。ステップ1を事実だけにしておけば、作業の半分は済んだようなものです。
  • 「根拠」の欄を飛ばしてしまう。結論ありきの記録では、自分の心がその結論を信じなくなります。思考記録が効くのは、公平だからこそです。
  • バランスのよい考えを、ただの励ましにしてしまう。「きっと全部うまくいく!」はバランスのよい考えではありません。不安を感じている心の一部は、それをちゃんと見抜いています。賢くて正直な友人なら実際にかけてくれそうな一文を書きましょう。
  • 頭の中だけで済ませてしまう。効き目のもとは、書くことそのものです。頭の中の考えは同じところをぐるぐる回りますが、紙に書いた文は、じっくり検討できるまでそこにとどまってくれます。
  • 落ち着くまで待ってしまう。書くのにいちばんよいのは、きっかけの直後です。自動思考を、浮かんだ言葉のまま書きとめられるからです。その場では状況と考えの二行だけでもかまいません。続きはあとからきちんと書けます。

役立つ場面と、向かない場面

思考記録が特に役立つのは、同じような大げさな受け止め方が繰り返されるときです。最悪の展開を想像しながら何度も読み返してしまうメール。「みんなに気づかれた」という決めつけ。ちょっとしたミスのあとの、自分への厳しすぎる判定。週に何回か続けていると、考えている途中で自然と問い直せるようになったと感じる人は少なくありません。それこそが本当のゴールで、紙の思考記録は、そのための補助輪です。BrightLogのアプリ内ガイドでは、16の「役に立たない考え方のクセ」(読心、先読みの誤り、破局的思考など)を紹介し、それぞれの考え直し方を思考記録の欄と結びつけています。頭の中で自然に問い直せるようになるための、近道のひとつです。

一方で、本当につらい状況にふさわしい気持ちを抱いているとき(深い悲しみ、現実の喪失、現実の危険)には、思考記録は向いていません。事実に裏づけられた気持ちを、思考記録で打ち消すことはできませんし、打ち消すべきでもありません。はっきりお伝えすると、この記事もアプリのどの機能もセルフケアのための練習であって、カウンセリングの代わりにはなりません。気分の落ち込みや不安が長く続いたり、重く感じたりするときは、資格のある専門家に相談するのが次の一歩です。ちなみに、きちんと書いた思考記録がたまっていれば、初めてのセッションに持っていくのにぴったりです。BrightLogのカウンセリングの準備機能は、それを読み込んでまとめてくれます。「思考パターン」の項目には、見つかった繰り返しのテーマが、当てはまりそうな考え方のクセとあわせて並びます。診断ではなく、AIが提案したパターンとして示されます。

紙で書くか、アプリで書くか

紙でも十分にできます。認知行動療法は何十年ものあいだ、コピーしたワークシートで行われてきました。ただ、紙には苦手なことがあります。つらい考えが浮かんだその瞬間に手元にあること(会議にワークシートを持ち込む人はほとんどいません)。そして、書いた思考記録を、日々の気持ちの記録と長い期間にわたって結びつけることです。

だからこそ、思考記録は別のワークシートではなく、日記の中に書くのがおすすめです。その日の気分や出来事のすぐ隣に並ぶので、ひと月後に見返したとき、不安だったことだけでなく、どんな考えが浮かび、それをどう書き直したかまでわかります。BrightLogでは、思考記録が日記の記録そのものに組み込まれています。記録にはもともと状況と気持ちが入っていて、そこに思考記録の4つの任意の欄が加わります。浮かんだ考え、それを支える事実、それに反する事実、そして振り返ってみた状況です。状況と考えをひとつ書くだけでも記録として成り立ち、事実の欄はあとから書き足せます。書きかけのままにしておけば、自分だけの下書きとして残ります。思考記録はPDFやCSVの書き出しにも含まれ、その日の気分の隣に並び、日記のほかの部分と同じようにプライベートなままです。デバイスの中に保存され、私たちに見えることはありません。そのためのアプリを選ぶなら、気分日記アプリの選び方ガイドに、これほど個人的な記録にふさわしい、プライバシーの確かめ方をまとめました。これから日記を始めるなら、思考記録より小さなことから始めましょう。まずは、夜に3つの文を書くことからです。

次につらい考えが浮かんだら、その場で書きとめる

BrightLogでは、日記のどの記録にもガイドつきの思考記録を添えられます。浮かんだ考え、それを支える事実と反する事実、振り返ってみた状況。4つの欄はどれも任意で、デバイスの中に残ります。